
高湿度冷蔵用クーラー MYCOMスーパーフレッシュ
低温・高湿度で野菜の鮮度を保った長期貯蔵を実現
Mayekawa
2023.11.30
福和生鮮農產股份有限公司様(以下、福和生鮮農產様)は、輸入および台湾国内の収穫による果物の収集、加工、流通、輸出まで手掛ける台湾大手の果物卸・カット加工企業です。
グローバル展開の大手スーパーマーケットや、海外進出しているコンビニエンスストアなどに新鮮なフルーツを提供しています。
福和生鮮農產股份有限公司 土城工場 外観
2022年、台湾新北市の中和から工場を移転し、台湾最大級のフルーツ加工場として、自然環境保護と持続可能な運営をコンセプトに新たに土城工場を立ち上げました。
中和工場にもマエカワの設備を導入いただいていましたが、今回は、福和生鮮農產様のビジネスパートナーである台湾大手の物流企業様からのご推薦をいただいたことに加え、日本企業でありながら台湾国内に複数拠点を展開、農産を含む食品産業、用途に対応した機器、システムを展開している実績を評価され、本プロジェクトのシステム設計を担当させていただきました。
土城工場の自然環境保護施策
ヒートポンプシステム採用で冷却と給湯を高効率に
マエカワは、これら施策のうち「省エネルギーとCO₂排出量削減」に貢献するアンモニア/エチレングリコールブラインユニットによるヒートポンプシステムを設計し、土城工場に納入しました。
催熟室の冷却など室温調整を行う一方で、アンモニア冷媒の高圧高温の熱を利用してサブコンデンサーで熱回収を行い、工場内で求められる、社員用シャワーやプロセス給湯に必要とされる+50~55℃のお湯をつくる熱源として活用しています。これにより、ガスのような燃焼エネルギーに頼ることなく、安全に給湯ニーズを満たすことができるようになったほか、一つのシステムで冷却と給湯が可能になったため工場内のエネルギー効率が良くなり、省エネルギー化を実現しました。
アンモニア/エチレングリコールブラインユニット
熟練技術者のノウハウをデータに基づいた品質管理へ移行
もう一つのコンセプトである『持続可能な運営』は、自社バナナの催熟工程をシステム化させることにより実現しました。
これまで熟練作業者が培ってきたノウハウは、個人の経験や感覚に基づくものであり、簡単に継承できるものではありません。高い品質を保持し続けるために必要な催熟を熟知した人材の育成と確保は、福和生鮮農産様にとって課題でもありました。
そこで、農産や研究開発に詳しい、マエカワの技術者を日本から呼び寄せ、福和生鮮農産様のご担当者と共に現場調査とフィールドテストを実施、各工程をデータ化し課題の洗い出しを行いました。その後、台湾のメンバーがその結果を基にしたシステム設計を行い、従業員の入れ替わりが発生しても、そのノウハウは失われることなく生産を継続できる環境が整いました。
そもそも、バナナの催熟とは?日本における流通工程から考える
スーパーマーケットやコンビニエンスストアで当たり前に売られている甘くて黄色いバナナ。青い状態で収穫されたあと、どのような工程を経て店舗に並んでいるかご存じでしょうか。
バナナが自然に呼吸できる最適な温度は13℃付近とされています。13℃を超えるとバナナの呼吸速度が上がり、自己発熱して酸欠状態に陥ることで呼吸が止まり、老化が進んでしまいます。一方、温度が低ければよいというわけでもなく、13℃を下回ると皮が黒くなるという低温障害を引き起こしてしまいます。また農産物の保管においては、萎れ防止の観点から、絶対湿度90%以上の空間での保管が良いことがわかっています。
日本で流通する輸入バナナは、生産国で収穫、選果、個別包装された状態で、段ボールに収められ、船で1か月かけて運ばれてきます。その期間に船内で13℃に保持され、青いまま日本へと到着します。その後、加工場において黄色く甘い状態にして出荷します。これを日本では「熟成処理」台湾では「催熟処理」と呼びます。
バナナの熟成にはノウハウがあり、庫内のCO₂やO₂濃度、温度、相対湿度などを細かく制御することが求められます。日本においては、どの加工場でもこれらの制御が自動で行われています。
土城工場 催熟室
台湾は生産地から消費地が非常に近い距離にあります。そのため一定の温度で輸入されてくる日本とは異なり、加工場への入庫温度の差が大きく、催熟後に品質がばらつく課題がありました。
そこで加工場での冷却方法を工夫することにより均温化を実現、熟練技能者とテストを繰り返してCO₂やO₂濃度、温度、相対湿度などを数値化し、最適な環境を自動で保てるようにプログラムを組み、システム化しました。
催熟室内の様子
催熟工程をシステム化したことで、安定した温度・湿度でバナナを管理できるようになり、製品ロス削減に貢献しています。
今回は、土城工場運用後の使用感や、マエカワをパートナーに選んでいただいた理由について福和生鮮農產様の邱進福さんにお伺いしました。
お話を伺ったメンバー
邱 進福さん
福和生鮮農產股份有限公司 会長
マエカワを選ばれた理由について教えてください。
中和工場(旧工場)のリニューアル設備も当時最先端だったマエカワ製のシステムを導入しており、マエカワとはすでにお付き合いがありました。
土城工場建設に向けて、複数の設備会社から提案をもらいましたが、マエカワの提案はヒートポンプシステムを活用することでガス使用量を削減するという安全かつ省エネルギーに貢献する優れた技術でした。加えて催熟工程のシステム化は持続可能な運用に貢献する技術です。したがって工場を移転新築するにあたり、当社のコンセプトに合致していると感じました。
また、日本にある守谷工場を何度か訪れ、実際に製造設備や、ものつくりの様子を見学させていただいたことや、設備だけではなく、催熟という生産面の課題についても一緒に取り組んでくれたことが、安心と大きな信頼につながりました。
農産物に知見があるマエカワの技術者が当社の旧工場に足を運び、私たちと対話を重ねながら、バナナの品質に主眼を置いてデータの収集から検証まで取り組んでくれたことが、バナナの品質ムラ解消、品質向上に大きく貢献してくれたと思います。
技術が優れているだけではなく、信用もある。優れた技術だけではなく、パートナーとして信用がおける。それがマエカワの価値です。
土城工場の冷却設備竣工時に。福和生鮮農產股份有限公司様とマエカワメンバー
運用後の状況とマエカワに期待することは?
土城工場は2021年8月に完工し、新たな催熟システムにより、旧工場の状態と比較して催熟後の色味、熟成ムラを99%解消することができました。色・艶が均等になり、食感も「もちもち」と丁度良い硬さに仕上がるようになりました。また、出荷先から「販売店舗において品質保持期間が長くなった」との声もあり、好評です。
運営面においても、催熟の工程管理をITによる自動制御で行えるようになったことで、熟練技能者だけに頼らなくても、誰でも簡単に操作、管理できるようになりました。 冷却システム、催熟システムともに安定稼働しており、非常に満足しています。マエカワとはこれからも定期的なサービスメンテナンスの実施を通じてお互いにWin-Winの関係を継続したいですね。
福和生鮮農產様のこれからについてお聞かせください。
企業としての基礎は誠実が原則です。これからもお客様に対して100%のサービスを提供していきます。台湾と日本の関係性は良好な状態が続いています。当社には台湾産の高品質な果物を鮮度の良い状態で日本に輸出するための環境、設備が整っています。当社の製品の品質は、日本の消費者の皆様にもきっと満足していただけることでしょう。
これからも新しいビジネスに向けてマエカワと一緒にチャレンジしていきたいです。
2023年に入り世界各地で異常気象の増加が報告され、日本においても超大型低速台風の発生や水不足、気温の高止まりの傾向が見られるようになりました。台風前に収穫せざるを得ない農産物の増加や収穫量の低減など、これまでには考えられなかった状況になってきました。
農産物の安定供給に向けて、時間をかけて栽培収穫した農産物の鮮度を保持しながら、保管時のロスを削減し、需要と供給のバランスが取れたしかるべきタイミングで消費者に届ける。そんな未来を描いて、マエカワでは、野菜、果物の鮮度保持に寄与する「MYCOMスーパーフレッシュ」を商品化し、農産・農産加工業界向けに販売しています。イチゴ、ブドウ、サツマイモなど、様々な品種にてテストを実施、データを蓄積しています。導入前テストのご相談も承ります。ぜひお問い合わせください。
高湿度冷蔵用クーラー スーパーフレッシュZERO
低温・高湿度で野菜や果物の鮮度を保った長期保存を実現します。0℃域での高湿度貯蔵も可能なため、イチゴやブドウといったデリケートな商材にも対応します。
お客様がお困りの際にすぐに対応できるよう、
マエカワのサービス拠点は全国各地に広がっています。
お客様ごとのサービス履歴をお客様に一番近い拠点で保管・管理し、
お客様のプラントの特徴を各サービスマンが共有しています。