
高効率自然冷媒冷凍機
NewTon(ニュートン)
突き抜けた省エネルギー性能
冷却装置
Mayekawa
2025.09.02
ニチモウ株式会社のグループ企業である株式会社ヤマイチ水産様は、2025年2月に魚肉すり身専用の冷凍工場を新設されました。 同社では1976年から北海道紋別市で冷凍すり身や冷凍ホタテ、魚粕製造など幅広い水産加工品を手がけておられます。
冷凍すり身は、紋別の前浜で獲れる新鮮なスケソウダラを中心に、ホッケ、春、秋に上がるニシンなどを原料に、年間4000トン前後、生産されています。水揚げされたばかりの魚をその日のうちに食品工場へ運び、自社で原魚加工処理からすり身加工、併設された冷凍工場ですり身の凍結まで一貫して行うことでニチモウグループの規格に則り、品質の高いすり身の生産が可能になっています。
また、2022年にはHACCP認証を取得され、海外も視野に入れたすり身の販路の拡大に努めていらっしゃいます。
3年前に新設した食品工場に続いて、間をおかずに冷凍工場を新設された経緯や、新しくなった凍結ラインについて同社取締役総合工場長渋谷典朗様にお話を伺いました。
お話を伺ったメンバー
渋谷 典朗(しぶや・のりあき)さん
取締役 総合工場長
新冷凍工場建設に向けて、課題に感じていたことはございますか?
渋谷:「人手不足」「省力化の実現」「冷凍工場の老朽化の解消」「ノンフロン機器の導入」の4つの点において解決策を模索していました。
この地域では新しい人財の確保が年々難しくなっています。そんななかでも工場の生産量を落とさずに、少人数で運営できる生産ラインの構築が急務でした。
旧工場では工程と工程の間が分断されている部分が多く、特に7台あるコンタクトフリーザーに対して1枚10kgの重さがあるすり身を搬入、搬出する作業は人手で行う必要があり、従業員にとって負荷が高い作業であると感じていました。
原魚の加工を行う食品工場の建て替えは完了していましたが、冷凍工場も建屋が老朽化していたことに加え、長年メンテナンスを重ねて使い続けてきた冷凍機とコンタクトフリーザーが故障するかもしれないという危惧もありました。
また将来を見据えて、設備の切り替えのタイミングで順次フロン機器の入れ替えにも取り組みたいと考えていました。
「人手不足」と「省力化」に対して新工場ではどのような点を工夫されたのでしょうか?
渋谷:業界で初めて凍結ラインを完全自動化しました。冷凍工場で行うすべての工程をコンベアでつなぎ、食品工場で生産したすり身の個別包装から凍結、箱詰め梱包まで人が介在しなくても自動で製品が流れていくラインを構築しました。
旧工場は7~6人で運用していましたが、現在3~2人での運用が可能になっています。すり身の運搬、凍結時に使用するトレイも凍結後自動で脱パン、回収し、ライン上を循環する仕組みにできました。
個別包装され、トレイに納まり凍結工程に搬送されていくすり身
搬送されてきたすり身はラインを分断することなく自動でTak-Autoに搬入される
これはマエカワさんから提案を受けた自動投入搬出可能な連続式のコンタクトフリーザーであるTak-Auto(タックオート)を導入したことで実現することができました。国内で運用されているコンタクトフリーザーは、どのメーカーのものも搬入、搬出作業は自動化されていません。したがって、そもそもコンタクトフリーザーの前後ラインを自動化するという発想がなく、計画当初は従来型のコンタクトフリーザーでその前後ラインは分断するしかないと考えていました。
そんな中、マエカワさんから当時発売したばかりだったTak-Autoの提案をいただく機会があり、導入に向けた検討が始まりました。導入の決め手は実際に導入され稼働している他社様の食品工場を見学させていただけたことが大きかったです。生産品目は水産加工品ではありませんでしたが、当社と同じ10kgの対象物を凍結されており、ラインを構想する上で、大変参考になりました。次々に自動で搬入され、凍結後搬出され、凍結後搬出されていく様子を実際に見たことで、Tak-Autoに対する理解度が格段に高まりました。
ヤマイチ水産と工事に関係する各社が集いラインを構想する場面では、食品工場のすり身の搬出位置が決まっていること、工場がある場所の地形はもともと起伏があることなど、様々な条件を踏まえながら、各社でアイディアを出し合い、最終的に効率の良い最適なラインを構築することができました。
2台のTak-Autoですり身を自動凍結。旧工場では従来型のコンタクトフリーザー5台で行っていたため、凍結工程の省スペース化も実現
Tak-Autoは「省力化」という点においても大変貢献してくれています。従業員によるコンタクトフリーザーへのすり身の搬入、搬出作業が一切なくなったことはとても大きなメリットです。これにより、従業員の体に負担のかかる、力を要する作業が大幅に削減されました。10kgのすり身をコンタクトフリーザーの上段から下段まで搬入、搬出するのは若い従業員であっても負荷の高い作業でした。フォークリフトを活用するなど工夫はしていましたが、1日40トン生産していますので、それが1カ月も続くと疲労が蓄積してしまいます。
奥の壁の向こう側にTak-Autoが2台設置されている。すり身は凍結、脱パン後、梱包工程に流れていく。2名でオペレーションが可能な日も。
これらの作業に従事していた従業員は、新しい工場では生産ラインを管理、運用するオペレーションが主な業務になり、仕事の内容が劇的に変化しています。これまでは冷凍工場の従業員は他の仕事に関わることはありませんでしたが、いまではTak-Autoやライン全体の効率的な運用方法を工夫する、食品工場はじめ別の生産工程の応援に入るなど、仕事の幅を広げることができるようになりました。今後、工夫次第でさらに少ない人数で工場を運用できるかもしれないという兆しも感じています。
生産するすり身の品質に関わるような設備面のこだわり、導入後に感じたメリットはありますか?
ヤマイチ水産様とマエカワが一緒になって開発、設計したトレイ
渋谷:新工場建設後も、同等の仕様のすり身を提供し続けるために、旧工場で作っていたものと同じサイズのすり身を生産する必要がありました。ここで重要になってくるのがトレイの仕様です。フリーザーの刷新により、同じトレイを使いまわすことはできないため、新たにトレイの開発、設計をマエカワさんと一緒に行いました。トレイの仕様を詰めるために、旧工場のコンタクトフリーザーを用いてテストを重ね作り上げました。
Tak-Autoを導入したことで、すり身自体の品質も向上しています。従来のコンタクトフリーザーは冷媒に入っている冷凍機油が凍結板の中で凝固することがあり、冷えムラが出る場合がありました。Tak-Autoは冷却設備として組み合わせた高効率自然冷媒冷凍機NewTonがアンモニアでCO₂を冷却する間接冷却方式なので、冷媒に冷凍機油を混ぜる必要がありません。凍結板内をまわるのがCO₂だけになったことで、熱伝達効率が良くなり、凍結板の温度も一定に保つことができます。従来のコンタクトフリーザーは冷えが甘くなってしまう部分を基準に凍結温度を設定するため、どうしてもエネルギーの消費量が高くなる傾向にありましたが、Tak-Autoによって最適な温度で凍結できるようになりました。
取り組まれた「冷凍工場の老朽化の解消」と「ノンフロン機器の導入」ついて教えてください。
渋谷:旧冷凍工場は、建物、冷凍設備の老朽化が進んでいました。メンテナンスは定期的に実施していましたが、設備は何かの拍子に突然不具合が出るものです。老朽化すればそのようなリスクは必然的に高まります。最悪の場合、生産がストップしてしまうこともあるでしょう。新設によって、そのような事態を回避しつつ、工場内の衛生面を高度化させることができました。
NewTon-F600×4台とCO₂レシーバー2台
Tak-Autoは自然冷媒対応可であるため、NewTonと組み合わせた冷却システムとしました。これにより環境省の令和6年度「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」の補助金を活用でき、投資の負担を軽減できました。
導入したNewTonは環境に優しいだけでなく、省エネルギー効果が期待できます。稼働後数カ月経ちますが、効率の良さを実感しています。当社は工場の各所で入れ替えを待つ冷却設備が残っていますので、順次自然冷媒冷凍機に切り替えていく予定です。
自然冷媒冷凍機は旧工場の頃から使用していたため、導入に関して不安はありません。加えてマエカワさんは当社の近くに拠点を展開してくださっており、何かあっても導入後にアフターサービスをお願いできる安心感があります。その他の装置についても言えることですが、導入後にアフターサービスをしっかり行っていただけるかどかは機器を選定する上で大事なポイントです。
今後の運用を続ける中で当社に期待するところはどんなところでしょうか?
渋谷:NewTonはマエカワさんのブランドといえる製品で、すでに高い省エネルギー性を発揮されていますが、さらに高みを目指して良い製品を作り続けていってほしいです。また、エンドユーザーのニーズに合わせてくださるのがマエカワさんの良いところだと思いますので、これからも多様なエンドユーザーに寄り添った提案やエンジニアリングをお願いできればと思います。今回の冷凍工場の案件についても凍結する対象物物に合わせた運用や調整に付き合っていただけて大変ありがたく思っています。
いまは稼働を開始した冷凍工場を永く運用していく段階になりましたので、今まで通り近くで、変わらないお付き合いをお願いしたいと思います。
冷却設備についてマエカワの担当者と意見交換する渋谷工場長(右)
ヤマイチ水産様のビジネスについてどのような展望を描いていらっしゃいますか?
渋谷:冷凍工場についてはすり身以外の対象物にも挑戦したいという気持ちがあります。地球温暖化により、海の中の環境や生態系に大きな影響が出ているようで、数年前に比べて前浜に上がる魚種とその割合が大きく変化していますが、これからも紋別の水産物の美味しさを鮮度良く、日本全国、そして海外にまでお届けしたいと考えています。将来的に、紋別の水産物を活かし当社の4本目の柱となるような商材を作り上げていきたいです。
自動投入搬出型連続式急速凍結装置
コンタクトフリーザー Tak-Auto(タックオート)
Tak-Auto(タックオート)では投入・搬出作業の自動化に成功し、これまでの重労働で危険な作業を省けるようになりました。斬新な機構により製品を連続して受け入れることができ、前後の生産設備と同期させることが可能になりました。
お客様がお困りの際にすぐに対応できるよう、
マエカワのサービス拠点は全国各地に広がっています。
お客様ごとのサービス履歴をお客様に一番近い拠点で保管・管理し、
お客様のプラントの特徴を各サービスマンが共有しています。