Mayekawa

「脱炭素社会の実現」を目指し、「サッポロビール九州日田工場」が水熱源エコキュート14台を導入。再生可能エネルギーとの組合せで大量のお湯を使いながら、CO₂排出量を削減

サッポロビール株式会社様では、グループ全体の環境への取り組み方として制定された「サッポログループ環境基本方針」や「サッポログループ環境ビジョン2050」に基づき、環境問題の課題解決に様々な手法で積極的に取り組んでおられます。同社にとって西日本唯一のビール工場である九州日田工場は、 “環境との共生”、“地域との共生”を基本コンセプトに2000年3月に竣工、良質な水を育む自然や地元への感謝を日々掲げながら工場の緑化を積極的に推進したことで、2025年1月に緑化優良工場として九州経済産業局長賞を受賞されました。
また、2024年7月には、総パネル面積約4,965平方メートル、1,922枚の太陽光パネルを工場内に新たに導入し、CO₂排出量の削減を図っておられます。

九州日田工場に導入されている太陽光パネル

それら取り組みの一つとして、同社には2019年から2023年にかけてマエカワの水熱源エコキュート(ユニモWW)14台が段階的に導入されています。
フロン冷媒の熱回収ヒートポンプから自然冷媒ヒートポンプに切り替えた経緯や、実際の効果、太陽光発電とヒートポンプの相性の良さなどについて、同工場のエンジニアリング部の神戸さんからお話を伺いました。

お話を伺ったメンバー

  • 神戸 健佑(かんべ・けんすけ)さん

    サッポロビール株式会社 九州日田工場
    エンジニアリング部
    リーダー

導入は性能を確かめながら段階的に

まずは、九州日田工場に水熱源エコキュート「ユニモWW」を導入するに至った背景や経緯について教えて下さい。

神戸:一番の目的は工場内で使われるエネルギーの削減及びCO₂排出量の削減でした。本工場では2009年から、フロン冷媒の廃熱回収ヒートポンプ(他社製)を導入し、省エネルギーを推進してきました。そのヒートポンプが老朽化してきたため、より性能が良いものへ更新し、CO₂排出量削減をさらに推進することや自然冷媒機器の採用による脱フロン化を進めたいと考えたことから、更新の検討を始めました。

検討に際してのポイントになったことなどはありましたか?

神戸:会社全体でCO₂排出量の削減をさらに取り組んでいくために何をすべきか、となったときに、九州日田工場ではお湯に関するエネルギーが多いので、まずはそれを減らそう、という話になりました。エコキュートについては過去に北海道工場の者がマエカワさんのホームページからカタログをダウンロードをしたり、展示会に伺って話を聞いてみたりして検討したものの、結局、電気料金の問題などもあり断念したという話を聴いたことがありました。それほど興味を引くような製品であるならば、九州日田工場での導入を検討してみてもいいのではないかと考えました。
2019年に性能評価のため1台導入したところ、コストメリットが大きく出ることが確認できたため、2022年に4台、2023年に9台、という流れで段階的に導入していきました。

背中合わせに並ぶ14台の「ユニモWW」

数あるヒートポンプ機器の中から、「ユニモWW」を選んで頂けたのは何故でしょうか?

神戸:工場で必要とされる温度帯に対応出来る機器かどうか。その条件に合致したというのが一番の決め手でした。各社の製品を比較検討させて頂きましたが、そもそも、我々が必要としていた「-5℃のブライン」と「90℃の温水」を同時に取り出せるという条件を満たす熱源が他になかったというのもあります。
洗浄殺菌用の温水は基本的に80℃以上ないと使えません。ユニモWWには、65℃と90℃の2つの出湯モードがありますよね。65℃の場合はそのあとに蒸気で昇温させる必要がありますが、90℃の温水が出るならその必要はありません。そこが魅力的でしたね。生産工程で使用される大量の高温水を充分に賄える性能と、ヒートポンプならではの省エネルギー性能がきちんと両立出来る機器であるということを評価し、以降本格的に導入していく形になりました。
使い始めて5年経ってきたので、当社の運用の仕方も段々変わってきています。最近は、65℃と90℃の給湯設定を切り替えながら温水製造を行い、足りない部分はボイラーの蒸気で補うというやりかたになってきています。

フロー図

日々の運用を元にベストな使い方を模索。ブラインも有効に活用し、より省エネルギーへ

九州日田工場様では、「ユニモWW」で作ったお湯や冷水をどのように使っておられるのでしょうか?

神戸:お湯は全てビールタンクを始めとした各所の殺菌洗浄に使っています。使う温度としては80℃以上なのですが、最近はお湯の使用量を見ながら65℃モードと90℃モードの切替を試してみて、使用量に合わせたベストな使い方を模索しているところです。導入時は65℃モードで運転した場合の試算しかしていなかったのですが、90℃モードも活用すれば、もっと稼働率が上げられるため、CO₂削減効果も増やすことができました。省エネルギー機器が導入される度に、ボイラーの稼働台数が減ってはいくのですが、ビール工場はとにかくお湯をたくさん使う場所なので、ヒートポンプを14台入れても今の段階ではまだボイラー1台を減らすまでには至ってないんですよね。ヒートポンプの台数をもう少し増やしたらボイラーが1台減らせるのではないかというところまでは来ているのですが…。

工場内の温水タンク(3台あるうちの2台)。それぞれ違う温度帯のお湯が溜められている。

ブライン供給については如何でしょうか?

神戸:ブラインは主にビールの冷却に使用しています。私としては最初はお湯のメリットのことしか考えておらず、ブラインについては副次的な効果くらいの感覚でしたが、実際に稼働させてみたところ、思ったより「ブライン冷却としても使える」と感じています。ブラインタンクの冷却に使っているターボ冷凍機の稼働時間が、ユニモWW導入以来、徐々に減らせるようになっています。今、ターボ冷凍機は予備機の1台を含めて4台あります。夏場の製造負荷が高い時には冷熱が間に合わず、3台が稼働している状況ではあるものの、少しのピークくらいなら2台とユニモWWで間に合う時もあります。
このまま安定してブラインを使えるようであれば、将来的に・・・例えばターボ冷凍機の更新を検討する際に・・・台数を減らすことを考えたり出来るかもしれないですよね。

工場内のビールタンク

環境負荷低減に加えコストメリットも。太陽光パネルとの組み合わせで拡がる自然冷媒ヒートポンプの可能性

今までのお話以外に何か導入効果や機器を使用してみての気づきがあれば教えて下さい。

蒸気使用量が減った分、工場全体のCO₂排出量が導入前の同期間(1月~9月)と比較して3.8%程度削減できたこともあり、ヒートポンプと太陽光発電の相性の良さを実感しています。
太陽光パネルを導入する前はデマンドコントロールの際に、ヒートポンプを始めとした省エネルギー機器から優先的に止めることで対応していましたが、太陽光パネルを導入したことでデマンドを気にせず動かすことが出来るようになりました。
あとは、自然冷媒になったことにより、フロン排出抑制法の点検や法令対応にかける手間を大幅に減らすことが出来たというのも大きなメリットであると感じています。

最後に、今回のプロジェクトの評価ポイントや、御社としての今後の展望などをお伺いできますでしょうか?

神戸:やはり、最初の1台からこちらが計画した性能をきっちり出して頂けていることが、最終的に14台の納入に繋がりましたし、当初の試算にはなかった90℃モードへの切り替えで稼働率向上が見込めそうな点など、運用の幅も拡げられる機器をご提案頂けたのは有り難いです。今後、今回のような給湯用途だけでなく、他の工程でヒートポンプの活用を検討していければと考えています。

サッポロビール九州日田工場への納入機器

水熱源エコキュート ユニモ WW

自然冷媒CO₂のヒートポンプで温水と冷水を同時に供給します。最高給湯温度は90℃、チラー水またはブライン冷却にも対応します。未利用熱(温排水・冷却水など)の有効利用も可能。冷水温度出口温度制御も選択できるため、既設チラーの更新にも活用いただけます。

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