Mayekawa
「イシイフーズ」がA重油焚きボイラから産業用エコキュートに熱源転換。環境負荷やエネルギーコストの削減に加え、作業負担も軽減。
2024.12.12
株式会社イシイフーズ様は、徳島県の山間、名西郡石井町で抗生物質・抗菌剤を使用しない特別飼育鶏「神山鶏」「阿波すだち鶏」を飼育し、鶏肉の研究開発から生産・加工・販売まで一貫した事業を行っていらっしゃいます。
イシイフーズで生産されている加工製品
2023年1月に、A重油焚き温水ボイラを空気熱源エコキュート「ユニモ AW」を用いたシステムに更新されました。この取り組みが評価され、一般財団法人ヒートポンプ蓄熱センターによる、令和6年度「ヒートポンプ・蓄熱システム運転管理等の改善事例表彰」の「奨励賞」を関係各社とともに受賞されました。
今回は、イシイフーズ様が既設の設備に対して抱えていらっしゃった課題や新たに導入されたシステムについて、同社代表取締役社長の大島用三さんと、エコキュートによるシステムへの更新を提案した四国電力株式会社 徳島支店 営業部エネルギーソリューション課 副長の武田浩一さんにお話を伺いました。
お話を伺ったメンバー
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大島 用三(おおしま・ちかみつ)さん
株式会社イシイフーズ 代表取締役社長
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武田 浩一(たけだ・こういち)さん
四国電力株式会社 徳島支店 営業部エネルギーソリューション課 副長
A 重油焚き温水ボイラの更新にあたり、エコキュートを選択された理由をお聞かせください。
大島:イシイフーズは一つの敷地内に食鳥処理場と食品工場があり、機器の洗浄やスコルダー(湯漬け)槽など、各所で温水が必要です。
株式会社イシイフーズ、左が食鳥処理場、右奥に見えるのが食品工場
既設の設備では貯湯槽は設けず、機器洗浄にはA重油焚き温水ボイラを利用し温水を供給、スコルダー槽には水を張ってからA重油焚き蒸気ボイラで蒸気を直接吹き込んで昇温していました。
エネルギーコストの削減、環境負荷低減といった課題が顕在化する中で、温水ボイラが経年劣化によって故障頻度が増加する傾向にあり、更新のタイミングが迫っていました。
イニシャルコストが比較的安価なガス式給湯器への更新も検討しましたが、四国電力さんと話をする中で、省エネルギー性やCO₂排出量削減といった観点からエコキュートという選択肢があることを知り、検討に入りました。
武田:提案前に四国電力の方でボイラの稼働状況や一次エネルギー使用量などを計測させていただきました。この結果を踏まえ、様々な角度からイシイフーズ様とともに検討した結果、産業用エコキュートに貯湯槽を加えた給湯システムがイシイフーズ様の温水運用に適していると考えました。1日で使用する温水量、各所の供給温度といった観点からマエカワさんのエコキュートが最適であると判断し、マエカワさんと一緒に具体的な提案をさせていただきました。
大島:計測結果をもとに、四国電力さんが導入前後で比較をした一次エネルギー使用量とCO₂排出量のシミュレーションを出してくれました。シミュレーション値で一次エネルギー使用量は46%削減、CO₂排出量は54%削減となっており、エネルギーコストの削減、環境負荷低減に寄与できるシステムとして、採用することにしました。
更新後のシステムを設計するにあたって、ポイントにされた点を教えてください。
大島:まず当社の運用規模に合った費用対効果の高いエコキュートと台数を選定しました。
機器単体としてはマエカワさんの空気熱源・水熱源を切り替え可能な「ユニモ AWW」の方が高効率でした。しかし、冷水と温水の供給場所が遠く離れていたことなどから、総合的に判断して「ユニモ AW」に決めました。
空気熱源エコキュートの特性上、「ユニモ AW」の能力が下がってしまう厳寒期における負荷ピークは既設の蒸気ボイラでバックアップすることで、最適な稼働効率になるよう台数を選定しました。
電力のデマンドに対する対策も行いました。
スケジュール運転を設定し、夏期の日中などは「ユニモ AW」を状況に応じて停止するように制御し、デマンドへの影響を回避できるようにしました。具体的には、夏期の午前中は冷凍機や製造ライン機器、事務所のエアコンなどで電気使用量がピークとなるため、「ユニモ AW」をスケジュール運転して午前中のピーク時間帯で停止させる制御を行っています。エコキュートは外気温度が高い夏期に一番能力を発揮するため、午前中停止させても生産に必要な1日の温水使用量を賄うことができます。
このシステムを組むにあたり、四国電力さんが事前に行ったシミュレーションを参考に設計できたため、大変助かりました。
「ユニモ AW」×2台と貯湯槽を組み込んだ給湯システム
加えて、スコルダー槽の湯張り作業の負担軽減も実現しました。 これまで従業員が行っていたスコルダー槽への早朝の湯張りを、システムのスケジュール運転により自動化し、作業時間を短縮しました。早朝作業がなくなったことで、従業員の負荷をかなり削減できました。
新しく導入されたシステムはどのようなものでしょうか?
武田:計測したイシイフーズ様の運用状況をもとに四国電力にてシステムの基本設計を実施し、マエカワさんには詳細設計を担当していただきました。
既設温水ボイラを「ユニモ AW」×2台に入れ替え、一つの貯湯槽から食品工場の機械洗浄用と食鳥処理場のスコルダー工程用の2系統に供給します。
既設の蒸気ボイラを継続して活用することで、万が一AWが故障したりピーク負荷時に温水が足らなくなったりしてもバックアップが可能なシステムになっています。具体的には貯湯槽への緊急給水回路と蒸気ボイラからの分岐で蒸気を吹き込んで貯湯槽を加温する回路を設け、バックアップ可能としました。
当初の提案では主に食品工場の機器洗浄用に温水を供給しながら、温水が余るようならスコルダーにも供給するようなシステムを予定していましたが、マエカワさんからスコルダー工程の温水に対しても「ユニモ AW」で十分なお湯を供給可能とお聞きして両方で運用することにしました。これによりイシイフーズ様の課題であった早朝のスコルダー槽の湯張りに対する課題も解決できました。
今後の展望をお聞かせください。
大島:引き続き安定的な生産活動に取り組むことはもちろん、多様化する社会の要求に応えられるよう、自然環境や作業環境にも配慮した取り組みを行っていきます。これからの加温、冷凍設備に対する投資は、当社の規模に合った自然冷媒を用いた機器から選択していくことになるでしょう。
従業員の作業負担軽減、省力化も引き続き進めていきます。2016年に導入したマエカワさんのチキン骨付きもも肉全自動脱骨ロボット「トリダス」によって、鶏もも肉から骨を抜く作業は自動化できましたが、生産工程にはまだまだ人手に頼る部分が残っています。将来的には従業員による作業は検品や整形といった付加価値の高い軽作業のみのラインになるのが理想です。
これからも四国電力さんやマエカワさんと情報交換を継続しつつ、イシイフーズを発展させていければと思います。
イシイフーズへの納入機器
空気熱源エコキュート ユニモ AW
空気の熱エネルギーを利用し、高効率給湯を実現する自然冷媒CO₂採用の業務用・産業用ヒートポンプ給湯機です。空気の熱エネルギーを利用して、大容量の温水を最高90℃にて供給します。
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