MAYEKAWA (MYCOM)

株式会社 前川製作所

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超電導機器の冷却技術

冷やす技術を追求してきたマエカワにとって究極の追求が超電導冷却技術です。超電導現象の実現には、その物質を極低温状態に安定して冷やすことが必要であり、冷却技術が重要な役割を果たします。超電導現象にはさまざまな特徴があります。「強力な磁場を発生させる」特徴を生かしたリニアモーターカーや医療用MRIは良く知られるところですが、「電気抵抗がゼロになる」特徴を生かしたものに超電導電力ケーブルがあります。

2007年より進めているNEDO「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」では、東京電力株式会社、住友電気工業株式会社、株式会社前川製作所のチームで、「高温超電導ケーブルシステムを社会のインフラ設備である電力送電システムに適用するための研究開発として、超電導ケーブル単体だけでなく、線路建設、運転、保守を含めたトータルシステムの信頼性評価」を行うために国内で初めての実系統に連系した実証試験を2012年10月29日より1年間行っています。

極低温に到る道のり

マエカワの極低温の歴史は、1972年に開発を始め、1978年にヘリウム冷凍機用のスクリュー圧縮機を米国フェルミ研究所へ納入したことから始まります。ヘリウム圧縮機はオイルフリーという従来の常識を打ち破ったオイルインジェクション式スクリュー圧縮機+ファインセパレーションシステムを開発したことにより、その後のヘリウム冷凍機用圧縮機は全て同タイプのものとなり、素粒子や核融合の研究等に貢献しています。1987年に開始されたNEDO「超電導発電機・材料技術開発(Super-GM)」では、高効率・高信頼性ヘリウム冷凍システムの開発を担当し、1993年から3年間にわたって行われた超電導発電機実証試験では、10,000時間以上を無事故で運転することができ、電力機器用のシステムとし使用可能な高い信頼性を検証しました。その後、ヘリウム冷凍システム開発で得られた技術は、空気冷凍システム「パスカルエア」に応用され、今回の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」に引き継がれています。

[図]

極低温に支えられる先端技術の開発推移

極低温環境を利用するのは、超電導機器だけではありません。例えば、宇宙ロケットの燃料となる液体水素や液体酸素は、それぞれの物質の沸点以下まで温度を下げなければなりません。水素の沸点は‐253℃(20K)ですので、その温度以下まで冷却する冷凍機が必要となります。液体水素は今後のエネルギー革命に欠かせない燃料電池等にも使用されます。もちろん、超電導応用分野においても、日本人のノーベル賞受賞者を輩出した素粒子科学の分野や核融合分野では、液体ヘリウム(沸点-269℃)が冷却剤として使用されています。超電導現象の実現温度が液体窒素(沸点-196℃)まで上昇することで、その応用範囲は大きく広がり、身近なものになってくると思われます。液体窒素温度で冷却されたスーパーコンピュータが登場しているかもしれません。

超電導ケーブル、実証への夢

NEDO「高温超電導ケーブル実証プロジェクトは、2007年度に開始され、ケーブルシステム、冷却システムのそれぞれの要素技術開発及び単体試験を経て、2010年度後半より東京電力の横浜の変電所内に設置工事を行いました。途中東日本大震災のため、工事中断を余儀なくされましたが、その後2011年6月より冷却システム単体運転試験、2012年3月からはケーブルと冷却システムを接続しての各種試験を行ってきました。マエカワは、もともと地中電力ケーブルの冷却システムを電力会社へ納入している実績があり、その実績をもとにした設計・施工・制御を今回の冷却システムにも導入しました。

簡単に説明すると超電導ケーブルは真空断熱された2重の配管内に収められており、その配管内に沸点(-196℃)以下に冷却された液体窒素を供給し、ケーブルの僅かな熱損失分で温度上昇した液体窒素を冷却システムで再度冷却し、ケーブルに供給するものです。供給温度は±1℃で制御され、6台の冷凍機を上手く運用することで連続運転を可能としています。電力機器としては冷却システムが停止することがあってはならないわけですので、故障時のバックアップや冷凍機や循環ポンプを運転しながらメンテナンスする方法など実用化のための様々な試験を実施してきました。また、現在の設備は冷却能力が小さく、効率もあまり良くないのですが、実用化にあたっては現在の物より能力で6倍、効率で2倍の大容量高効率冷凍機の開発を並行して行っています。 

これが実現すると従来の電力ケーブルより10倍以上の電力を供給できるようになり、損失も1/2となります。今後の都市部の電力ケーブル入替需要や再生可能エネルギー等の新しい電力供給システム用、長距離送電用など国内外から大きな期待を寄せられています。

「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」

概要 東京電力神奈川支店 旭変電所にて、高温超電導ケーブルシステムを実系統に連系した実証試験を実施する。
スペック 66kV、200MVA級の三心一括型超電導ケーブル 長さ約240m、ジョイント1箇所含む
研究期間 平成19~25年度
体制 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東京電力(株)、住友電気工業(株)、(株)前川製作所
総予算 27億円(一部事業者負担)
[図] 出典:住友電気工業(株)殿
[図]
[写真] 冷却システム建屋
[写真] ケーブル端末部
[写真] ケーブル中間ジョイント部
[写真] ケーブル敷設部
[図] 実証試験用冷却システム
[図] 大容量高効率ブレイトン冷凍機:冷却能力5kW級(開発中)

今後の予定

1年間の実証試験中、冷却システムは無人自動運転され、運転データはインターネット回線を通して東京電力の技術開発研究所に送られ、監視されます。一部のデータは、本プロジェクトの公式webサイトにて公開されます。

期間中、冷却システム内の冷凍機は順次メンテナンスを行いますが、冷却運転を継続しながらの作業となります。これも実用化のための検証項目であり、世界で初めての試みとなります。また、冷凍機、液体窒素循環ポンプの故障時にも、同様に運転を継続しながら機器を取り外せるようになっています。

本実証試験を通して、実用化のための貴重なデータを取得するとともに、電力機器として問題なく使用できることの実績が出来ることになります。下図は、経済産業省の技術戦略マップですが2020年頃の実用化を目指して、本実証試験の役割は大きいと言えます。

[図] ※出展「経済産業省 技術戦略マップ」